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2024.06.10
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2024年4月1日より、新しい「建築物の省エネ性能表示制度」がスタート。新築建築物の販売・賃貸の広告などにおいて、省エネ性能ラベルの表示が努力義務となった。現在、注文住宅においては対象外であるが、住宅を販売する営業マンにとって必要不可欠な知識になってくることは間違いない。そこで今回は、住宅営業マンが知っておくべき省エネ性能ラベルの知識について要約する。特に新人においては、社内で勉強会を開くなどして、積極的に知識の習得に取り組むと良いでしょう。
日本におけるCO2排出量の約1/3を占める住宅・建築物。さらなる省エネ化が求められる中で、重要な一歩としてスタートしたのが省エネ性能ラベルの表示だ。建築物を購入・賃借する消費者が物件の省エネ性能を容易に把握できるように表示することで、省エネ性能の高い建築物の供給が促進されることが期待されている。
大きな目標となるのが、2050年のカーボンニュートラルの実現。今回の省エネ性能ラベル表示制度だけでなく、2025年4月には省エネ基準が適合義務化されるなど、住宅・建築物の省エネ化の取り組みは住宅会社にとって必要不可欠なものとなりつつある。
省エネ性能ラベルに表示されるのは、その物件のエネルギー消費性能や断熱性能、目安光熱費、ZEH水準など。省エネ性能の高さや断熱性能がわかりやすく星の数などで示されており、1年間にかかる光熱費の目安まで記載されている。ポータルサイトやチラシ等の広告にはこのラベル画像が使用され、保管用のエネルギー消費性能の評価書もセットで発行される。
ポイント1:エネルギー消費性能が★の数で示される
国が定める省エネ基準に適合していれば★が1つ。そこから消費エネルギーを10%削減するごとに、★の数が1つずつ増えていく。太陽光発電などの再エネ設備の設置状況についても、★の数で視覚的にわかる仕組みだ。
ポイント2:断熱性能が1〜7の数字で示される
断熱性能についてはUA値(建物からの熱の逃げやすさ)と、ηAC値(建物への日射熱の入りやすさ)から判断され、家の形のマークで示される。地域区分に応じた等級でUA値とηAC値をそれぞれ評価し、いずれか低いほうの等級を1〜7レベルで表示。4で省エネ基準を、5以上で誘導基準を達成していることを示す。
ポイント3:1年間の光熱費の目安が示される
任意項目として、年間の光熱費の目安を表示することも可能だ。算出時の条件は住戸面積30㎡あたり1人(120㎡以上の場合は4人)で、平日・休日における冷暖房・給湯・照明などの運転時間帯をあらかじめ想定値として設定し、地域別の外気温をもとに光熱費の目安を算出する。家族の人数や生活スタイルによって実際の光熱費とは相違がでてくるが、消費者としては今後の家計をイメージしやすい数字であり、自主的に表示する意義は大きいだろう。
省エネ性能を評価するには、自己評価と第三者評価の2つの方法がある。
(1)自己評価:販売・賃貸事業者が自ら指定のWEBプログラムや使用基準を活用して省エネ性能の評価を行う。
(2)第三者評価:第三者機関に評価を依頼する方法で、BELS(べルス)を使用するとされている。
自己評価の場合は、販売・賃貸事業者が自ら住宅性能評価・表示協会のホームページから発行。第三者評価の場合は、評価機関に申請して交付される。その後、仲介事業者や賃貸管理事業者を経由して、消費者へとラベルが届く流れだ。
自己評価と第三者評価のどちらで発行されたものであるかはラベルにも表示される。BELS評価書を取得することでラベルにもBELSの表示がされ信頼性が向上できるうえ、ZEHなどの補助金申請や住宅ローン控除の手続きにも活用できる。
省エネ性能表示制度の開始は2024年4月1日。これ以降に確認申請が行われる新築物件や再販・再賃貸される物件では、住宅や建築物の販売・賃貸事業者は広告に省エネ性能ラベルを表示する努力義務が課せられ、従わない場合は国からの勧告等が行われる。2024年4月1日以前に確認申請が行われた既存建築物についても、省エネ性能が明らかな場合は新築と同様にラベルの表示をすることが推奨されている。
冒頭で触れた通り、注文住宅においては今回の努力義務の対象外となっている。注文住宅は請負により建築されるため、新築時点では販売や賃貸を目的としていないからだ。ただし性能値が確定した場合はラベルを発行するのが望ましいとされており、将来的に買取・販売される際には買取再販事業者に努力義務が課せられることとなる。
まだ積極的な取り組みをしている業者は少ないが、自主的にラベル表示をする業者が出てくる可能性も否めないため、競合他社の取り組みに注意を払いたい。仮に省エネ性能という土俵で戦わない場合であっても、自社商品の魅力をどのように提示していくか改めて考える必要があるだろう。
そして住宅営業マンとしては、省エネ性能ラベルについて理解を深め、顧客からの質問に適切に答えられるよう備えておくことが重要だ。まだラベルについて知らない消費者がほとんどだが、メディアや営業マンからの説明などを通じて徐々に浸透していくことは想像に難くない。
実際に家電製品にはすでに省エネ性能ラベルが表示されており、家電製品売り場やカタログで、星の並んだラベルを目にしたことがある方も多いはずだ。家電を購入する際に、いくつかの候補のうち「年間光熱費はいくらかかるのか?」というラベル表示を参考にして購入する商品を選んだ経験をもつ方も多いだろう。
このように住宅についても、ラベルをひとつの判断基準として選ぶ顧客が出てくるのではないかと予想される。実際に次の2種類のラベルが表示された住宅があったとき、右の物件を選びたいと考える方が多いのではないか。
またラベルに関してだけでなく、今後は省エネ性能自体の関心もますます高まっていくだろう。住宅の省エネ性能が高いことによりどのようなメリットが生じるのか、自社としては省エネに関してどのような提案ができるのか、改めて整理しておきたい。
建築物の省エネ性能表示制度について業界全体としての関心は高いものの、積極的な取り組みをスタートしている企業はまだ少ないのが現状だ。
しかし、2000年にスタートした耐震等級が今では多くの住宅購入検討者にとって重要な判断基準のひとつとなっているように、性能ラベルを見ながら住まい選びをするのが常態化する日も遠くないだろう。
国の取り組みとしても、今後はラベル表示だけでなく補助金など高性能な住まいが優位になる流れだ。
必ずしも自社の強みが性能の部分ではないとしても、性能に特化した競合他社に対応できるよういち早く省エネ性能について知識をつけ、それをリードする要素のひとつにしたい。
時代の流れに合わせて自社商品のプレゼン手法をカスタマイズすることで、独自性の確立と差別化を図り、顧客にとって最適な選択肢を提案できるよう効果的な戦略を立てたい。