工務店のDX最前線!デジタルツールで変わる現場管理 | 株式会社LIFE QUARTET

2025.05.16

工務店のDX最前線!デジタルツールで変わる現場管理

工務店のDX最前線!デジタルツールで変わる現場管理

建築業界のDX化が遅れている要因

建築業界、特に工務店やビルダーにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、他業種と比較して遅れているのが現状だ。その主な理由は、現場で建物を作る業態特性にある。店舗やオフィスで完結する業務と異なり、現場作業が中心となる建築業では、デジタル化の導入や運用が難しい側面があるのだ。

 

しかし、少子高齢化による人手不足や業務効率化の必要性、顧客ニーズの多様化など、工務店を取り巻く環境は急速に変化している。企業が長期的に存続し、競争力を維持するためには、いずれDXは避けて通れない道となるだろう。

 

重要なのは、一気に全てをデジタル化しようとするのではなく、自社の課題や状況に合わせて、できることから一つずつ取り組んでいくアプローチだ。「何から始めればいいのか」という疑問に対し、本稿では工務店・ビルダーに適した具体的なDX戦略を紹介していく。


工務店・ビルダーがDXに取り組むメリット

近年、単なるIT化(アナログをデジタルに置き換えるだけ)から、真のDX(データやデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセスを革新する)へと潮流が変化している。工務店・ビルダーがDXに取り組むことで得られるメリットは多岐にわたる。

 

メリット1.情報共有の迅速化と移動時間の削減

従来の工務店経営では、現場と事務所の間で情報共有するために、頻繁な往復移動が必要だった。デジタルツールの導入により、現場にいながらリアルタイムで情報を共有できるようになれば、往復の移動時間が大幅に削減できる。

 

メリット2.ミスや手戻りの防止と品質管理の向上

住宅建築では、施主の要望に応じた細かな仕様変更が頻繁に発生する。従来の紙ベースの情報共有では、変更内容の伝達ミスや認識の違いが生じやすく、手戻り作業の原因となることが少なくない。

デジタルツールを活用して仕様や変更履歴を一元管理することで、関係者全員が同じ情報を参照できるようになり、施工ミスや認識の違いによる手戻りを大幅に削減できる。また、工程ごとの施工写真をデジタル管理することで、品質管理の精度向上や、万が一のトラブル時の証拠資料として活用できるのもメリットだ。

 

メリット3.顧客対応の質向上

注文住宅の営業・販売プロセスは長期間にわたることが一般的だ。資料請求から契約、施工、アフターフォローまで、一人の顧客と数年以上の付き合いになることも珍しくない。その間の顧客情報や商談履歴を適切に管理し、活用することが、顧客満足度向上の鍵となる。

顧客の好みや要望を社内で共有することで、一貫した対応が可能に。また、過去の商談内容や約束事項を即座に確認できるため、担当者が変わっても質の高いサービスを継続して提供できる。

工務店のDX最前線!デジタルツールで変わる現場管理

工務店・ビルダーのDXの鍵を握るシステム

工務店・ビルダーのDXを推進する上で中核となるのが、業務効率化を支援する各種システムだ。ここでは、特に効果が期待できる主要システムを紹介する。

 

SFA(営業支援システム)・CRM(顧客管理システム)

住宅購入は人生最大の買い物であり、検討期間も長期にわたる。この複雑な営業・販売プロセスを効率化するのがSFAとCRMだ。商談状況、顧客情報、見積もりなどを社内で共有することで、複数の営業担当者が協力して一人の顧客をサポートできる体制が整う。

また、顧客の要望や好みをデータベース化することで、より効果的な提案が可能になり、成約率向上につながる。さらに、成約に至らなかった顧客の情報も蓄積・分析することで、新規集客方法の改善に活用できるだろう。

 

BIM(3次元モデル)

Building Information Modeling(BIM)は、建物の3次元モデルを基に設計・施工情報を統合的に管理するシステムだ。図面だけでは伝わりにくい空間イメージを、施主に視覚的に伝えることができる点が大きなメリットとなる。

また、設計段階でさまざまなシミュレーションが可能なため、施工前に問題点を洗い出し、修正することができる。設計変更があった場合も、図面とパース、数量表などを一括で更新できるため、作業効率が大幅に向上。日本の住宅建築におけるBIM普及はまだ発展途上だが、今後ますます重要性が高まる技術といえるだろう。


工務店・ビルダーに適したDX取り組み例

ここからは、工務店・ビルダーが比較的取り組みやすいDXの具体例を紹介していく。自社の課題や状況に合わせて、優先度の高いものから段階的に導入していくことをおすすめする。

 

オンライン商談の導入

ZoomやTeamsなどのツールを使った顧客との遠隔打ち合わせは、移動時間や交通費の削減に直結する。特に忙しい共働き世帯や、遠方に住む施主との商談では、オンラインツールの活用が顧客満足度向上にもつながるだろう。また、短時間でも頻繁に打ち合わせができるため、細かな確認や相談がしやすくなり、顧客との意思疎通が円滑になるという副次的な効果も期待できる。

 

現場写真管理アプリの活用

スマートフォンの普及により、誰でも簡単に高品質な写真を撮影できるようになった。この利点を活かし、専用アプリで工程ごとの現場写真を整理・共有する方法が注目されている。

従来は現場監督が個人のスマホやデジタルカメラで撮影した写真を、帰社後にパソコンに取り込み、フォルダ分けして保存する必要があった。写真管理アプリを活用すれば、撮影と同時にクラウド上にアップロードされ、工程や部位ごとの整理も容易だ。

 

電子契約システムの導入

従来の紙ベースの契約では、書類の作成・印刷・郵送・保管に多くの時間とコストがかかっていた。また、訂正や変更が生じた場合、再度同じプロセスを繰り返す必要があった。電子契約システムを導入することで、契約書の作成から署名、保管までをデジタル上で完結。手続き時間が短縮され、紛失リスクの低減や検索性の向上にもつながる。

 

工程管理のデジタル化

工務店経営において、複数の現場を同時に管理することは大きな課題となる。特に職人の手配や資材の発注タイミングなど、工程管理の精度が収益性に直結する。

工程管理専用アプリを導入すれば複数現場の進捗を一元管理できるようになり、職人の手配ミスや資材の納期遅れといったリスクを大幅に削減。急な予定変更があった場合も、システム上で調整し、関係者全員に即時通知できる。

 

図面・資料のクラウド管理

住宅建築では、設計図や仕様書など多くの図面・資料を扱う。クラウドストレージを活用することで、関係者全員が常に最新の図面を共有・管理できる環境が整う。現場でもタブレットやスマートフォンを使って細部の寸法や仕様を即座に確認できるため、記憶違いによる施工ミスの防止や、現場からの速やかな報告・相談が可能になり、全体の業務効率が向上するだろう。

 

見積・原価管理のデジタル化

従来のエクセルベースの見積もり作成では、多くの手作業が必要となり、ミスも発生しやすい。見積ソフトを導入すると、過去の実績データを基にした迅速かつ正確な見積もり作成が可能だ。原価管理システムと連携させることで予算超過のリスクを早期に発見し、適切な対策を講じることも可能になる。過去の物件の原価データを蓄積・分析することで、より精度の高い見積もり作成や、収益性の高い商品開発にも活用できるだろう。

 

在庫・発注管理の効率化

住宅建築では、多種多様な資材を適切なタイミングで現場に納入する必要がある。従来の発注管理では、紙の伝票や電話での発注が中心となり、ミスやダブルオーダーなどのリスクが常に存在していた。発注管理システムを導入することで、発注から納品までのプロセスを一元管理。過剰在庫や欠品リスクを大幅に削減し、発注履歴や納品状況を可視化することで、より効率的な調達計画の立案も可能になるだろう。

工務店のDX最前線!デジタルツールで変わる現場管理

小さな一歩から始めるDX戦略

工務店・ビルダーのDX推進は、一朝一夕に実現するものではない。重要なのは、まず自社の現状を客観的に分析し、どの業務プロセスがアナログのままなのかを把握することだ。顧客開拓、顧客管理、施工管理と、各フェーズにおいてデジタル化の状況を整理することで、優先的に取り組むべき課題が見えてくるだろう。

 

外部のシステム会社が提供するサービスなどを試験的に導入し、成果が出てきたら、さらに踏み込んだDX戦略を検討していく。社内にIT人材を採用するか、システムの自社開発を進めるかなど、中長期的な視点での判断が必要になるだろう。

 

DXは目的ではなく手段であることを忘れてはならない。最終的な目標は、業務効率化による生産性向上や、顧客満足度の向上、そして社員の働きやすさの実現だ。デジタル技術を活用して、これらの目標に一歩ずつ近づいていくことが、工務店・ビルダーの持続的な成長につながるだろう。

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