2024.09.27
5人の有識者が本音で語る3年後の住宅業界のあるべき姿|リフォーム産業フェア2024
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introduction… 2024年8月6日(火)・7日(水)に開催されたリフォーム産業新聞主催「リフォーム産業フェア2024」にて、代表の山本がキーパーソン特別セミナーに登壇しました。セミナーのトピックは「5人の有識者が本音で語る3年後の住宅業界のあるべき姿」。現在住宅業界が置かれている状況やマーケットトレンド、今まさに取り組むべき課題など、今後を見据えて必要となるアクションについて、ディスカッションを行いました。 |
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・建築業界の今後、新たな市場に向けて
・若い社員をやる気にさせる「戦略的な仕掛け」
・AIを使った集客手法!今すぐできるアクションとは?
現在行っている取り組みから、今後どういったアクションが取れるのか、5名のアイデアが飛び交いました。様々な課題を抱える皆様にとって、この記事が解決のヒントになるはず。
講演者:
司会/ダンドリワーク代表取締役 加賀爪宏介氏
BETSUDAI Inc. TOKYO CEO 林哲平氏
JIBUN HAUS. 代表取締役 内堀雄平氏
WAKUWAKU 代表取締役 鎌田友和氏
LIFE QUARTET代表取締役 山本航聡
住宅業界大転換期 勝ち筋って見えてる?
加賀爪:去年あたりからやっとリフォームという業界が本格的に盛り上がってきたと思っています。昨今新築においては、反響も減ってなかなか集客も難しい、今回のリフォーム産業フェアのテーマでもあるように、住宅業界は「大転換期」であると思っています。
僕は新築だけでもダメ、リフォームだけでもダメなのではないかと考えていますが、ある種折衷案というか、間の答えを各社皆さんどんなふうに考えられているのかを聞かせていただきたいと思います。
鎌田:コロナ渦から資材の高騰をはじめとして、2024年問題もあり、原価が上がり続ける傾向はしばらく続くかなと思います。土地の単価も上がり続けている中、良い立地で良い住まいを買おうとすると新築が当たり前に買えなくなっているのが現状です。
昔は新築を買えない人が中古を買うという妥協した買い方だったのが、最初から中古を買うというのがここ数年の大きな変化だと感じています。
加盟いただいている会社についても初めは不動産系が多かったんですが、今は建築会社が8割を占めていて、この5年くらいでガラッと変わったという雰囲気ですね。
内堀:弊社でも新築の着工数は苦戦してはいますが、その中で棟数を追うというよりは、1棟1棟粗利をきちんと取れているのかが重要だと思っています。
リフォーム・リノベーションも視野に入れてはいますが、今はまだ全国で77万戸は新築が建てられているので、マーケティングをしっかりすれば棟数は伸びると考えています。
山本:実際我々も集客・受注が厳しい状況にあります。一方でUNSTANDARDに加盟いただいて受注が伸びている会社さんがいまして、なぜかというと戸建て賃貸をたくさん受注していたんですね。
そこで調べたところ、現状戸建て賃貸は需要の割に供給が少ないことに気づき、自分でも戸建て賃貸を展開したところ受注に繋がりました。
リフォームはやはり難しさもあるので、工務店として新築だけに拘らず、層を変えることで新築の戸建て賃貸という新たな市場を開拓することも手だと実感しているところです。
加賀爪:持ち家は減っていますが、いわゆる所有しない戸建ても実は新築の工務店のターゲットだと10年程前から言われてましたよね。それが今になって盛り上がっているといった実感です。
所有しない戸建ての新築事業の需要は結構あると僕も思っています。
林:ここ15年程困っているテーマはずっと同じで、リフォームは厳しい・土地が減っている・資材の高騰についても安くなることはなく、どの市場においてもおそらく同じだと思います。その中で、何を自社のストロングポイントに変えて経営戦略としていくかが重要になってくると考えています。
リフォームはそこまで儲かる市場ではないです。どうしてもヒューマンエラーが起こりやすい市場ですが、逆を言えば人次第でいくらでも儲かる市場だとも思います。なので何をテーマとして経営戦略を話し合うのかというのが大事かと思っています。
ブランド/サービスで急ピッチで取り組んでいることは?
林:昔よりも会社のフラッグシップ、要はどこを目指すかを発信しないと社員がついてきにくい時代になっていると感じます。となると大事になってくるのは徹底的な社員教育だと考えていて、会社の組織力を上げない限りは市場は開けないと思っています。
山本:弊社は今年3月に「オールドアメリカン」をテーマにした商品を発表させてもらいました。「アメリカン」は日本人にとって慣れ親しんだカルチャーですが、今まで住宅としてはいまいち定義ができていなかったというところで、株式会社ケンロックの岩切氏とタッグを組んで新商品を開発しました。
その上で今後は都市型や平屋を展開し、UNSTANDARD本部としては、この数年間さらにオールドアメリカンの住宅を定義づけしていきたいところです。
内堀:ブランドとしての側面で言うと、今まで弊社は全国一律、どこでも同じ商品を訴求することをやっていましたが、やはり今は地域性やそれぞれの工務店の強みに応じて地域マーケティングをしていくことが重要だと感じています。
ですのでジブンハウス本部としては全国一律という視点で進めていくが、各地域ごとのマーケティングに力を入れていくことが急ピッチで進めていこうとしている課題です。
鎌田:認知と教育ですね。社員の教育で言うと、会社案内で過去の会社の実績を話すだけでは自慢話になってしまってお客様の共感を得られません。
ですので、なぜ今この事業をやっているのか、未来に何を成し得たいのかと、どんなことを社会に価値貢献したいのかということをお客様に認知獲得して教育をすることがとても重要だと考えています。
加賀爪:売り上げ最強主義はもう終わりましたよね。今は粗利が重要だと言われています。今後重要なのは売価を上げるのではなく、計上利益だけを見た方がいいと考えています。
粗利と経常利益の大きな違いは、従業員の時間の使い方です。現状住宅業界は社員教育のオペレーションが形になっていないということを僕は問題提起しています。
社員/チームに意識的に投げかけていることとは?
内堀:経営者の方に向けての話になりますが、自社がなぜその数字をやるのかということも大事ですが、まずはどこを目指しているのかのビジョンを語れるかというのが数字の前にないといけないと思います。
林:今の若い世代は無駄なことはしたくなくて、効率を重要視している。それが現代の文化になっています。なのでトップダウンではなく、フラッグシップを建てるのはあえて若い世代ではないかと最近感じています。
会社の元々の理念を若い社員がどう立て直すのかということを社内でやった方が、会社の推進力が生まれるのではと考えています。でないと、10年後中小の工務店は厳しいと思っています。なぜなら上の世代と若い世代がちょうど交わることなく終わっていくからです。
加賀爪:おっしゃる通りですね。弊社のクライアントさんにも従業員がいないから廃業されるという会社が増えてきています。現場監督さんが辞めたらもう2度と入ってこないとか。結構増えている課題だと思いますね。
鎌田:今はもう売り上げを求めることが難しい、ですので売り上げを最小にしてでも利益を最大化することを考えなければいけないと思います。
もう一つ、ここ数年生産性をあげる呪縛に陥っているケースが結構あると感じます。なんでも効率化を求めることが実は非効率に繋がっていること、逆に非効率だと思って辞めたことが効率に繋がっていたことがあると思います。どこを削ってどこに注力するかというメリハリがとても大事だと考えています。
住宅業界の今後のアクション。未来予想と成功のカギ
山本:やはり紹介をもらうことです。ただ営業マンがチラシを持ってお客さん宅に訪問ということではなくて、例えば今ですとお中元の季節ですよね。
お中元のお届けを定期的に行うとお客さんの中でサイクルが生まれ、紹介をいただけるんです。弊社は2〜3年くらい続けると効果が出始めました。紹介の凄さは初回の面談率がほぼ100%なんですね。なので面談に紹介費をかけた方がいいと思います。
内堀:ChatGPT有料版を全社員に付与することです。これからいかにAI化していくかというのが時代の流れとして大前提になっていると思います。
有料版でもそんなに金額も高くありませんし、それすら取り入れないのはトライアンドエラーをしていないに等しいと考えていますので、年齢関係なくとりあえずChatGPTをやってみることですね。
加賀爪:僕の会社ももちろん生成AIを使っています。ただうちの場合はエンジニアではなく一番使っているのは事務方ですね。
住宅会社の事務方の仕事はかなり生成AIで賄えると思います。そういう未来がすぐ来ると思いますし、異業種はもうすでに使っています。この業界はまだ使えていないのが現状なので、すぐ取り入れるべきことです。
林:毎朝社訓を全員で読むことですね。従業員の上・中間・下の層それぞれに大きな溝があって、その世代間の溝は消費者にもあります。
そこにもっと着目して、特に建築業界においては外ではなく内を向かなくてはいけないと思います。市場はあるんですが、結局働き手問題だったり組織の中の問題が多いので、中を向いて色々考えていく必要性を強く感じています。
今エンドユーザーに伝えるべきことは?
鎌田:お客さんに伝えるということ自体が間違いのポイントになると思っています。社員それぞれにいろんな武器がある。武器があるとお客さんに伝えたくなりますが、どんなに素晴らしい武器を持っていたとしても相手のことを知らなければ何を伝えるべきかわからないですよね。
何が相手に刺さるかは人によって違うので、相手が何を望んでいるか、徹底的な顧客思考が大事であるということです。武器があれば売れるということではないんです。
内堀:各会社ごとにどういうブランドメッセージを伝えたいのかというのがあることが大前提だと思います。自分たちの目指していることはやはり言葉が乗ると思いますし、説得力も増します。社内で体現していることにもつながります。
あと規模を問わず広報チームを社内に作り始めた加盟店さんも増えてきました。社内でコピーライティングやクリエイティブを作り込めれば、一貫性を待たせたメッセージを発信できるというのはポイントじゃないかと思います。
山本:50年ローンもできたことでローンを組むお客さんがとても増えました。でも背伸びして家を建てたとして、家族旅行ができないとかちょっとした贅沢を我慢するということも聞きます。
幸せな人生のひとつにマイホームがあるというのが根本なので、何か幸せを削ってまで家を建てることではないということは伝えたいですね。
林:色々な事業を手がけて僕が思うのは、まだ工務店さん・リフォーム会社さんは、会社が何をしてくれるのかというアピールはほぼできていないと思ったほうがいいということです。
自分が消費者の立場に立った時に、会社が何をしてくれるかは資料でしかわかりません。昔はHPを見てくれてたんですが、今はInstagramや広告を打たないと見てくれない。それをしっかりどう戦略を立てて作るかというのを今一度考え直さなければいけないと思います。
まとめ
それぞれの観点から具体的な施策やアイデアがたくさん語られた今回の特別セミナー。すぐに取り入れられるヒントがたくさん得られたかと思います。
近年厳しいと言われ続けている新築住宅業界ですが、改善すべき内容に全力で取り組んでいくこと、会社の規模に関わらずまだまだ戦える環境があることに気づくきっかけになったのではないでしょうか。
ぜひ今から行動に移していただければと思います。