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2025.04.18
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近年、工務店の集客施策としてSNSの重要性が語られることが増えているが、その陰で静かに力を発揮しているのがメールマガジン(以下、メルマガ)だ。華々しいSNSの影に隠れがちだが、実は顧客との関係構築において非常に強力なツールとなる。
住宅の購入プロセスは長期にわたるため、見込み客との継続的な接点を持つことが欠かせない。SNSが「広く浅く」届けるツールであるのに対し、メルマガは「狭く深く」コミュニケーションを取るツールとして機能する。資料請求後やイベント参加後の見込み客を温め続けることで、最終的な成約へと導く重要な役割を担うのだ。
資料請求やモデルハウス見学の後、すぐに契約に至るケースは少なく、多くの場合、数ヶ月から数年の検討期間を経て意思決定される。この検討期間に、定期的に有益な情報を届けることでファン化を促し、最終的な成約につなげる役割をメルマガが担う。特に資料請求やイベント参加後のフォローアップとして活用すれば、「検討中」の顧客を温め続けることができるだろう。
チラシやDMと比較して圧倒的に低コストで運用できるのがメルマガの強みだ。印刷費や郵送費が不要で、配信数が増えてもコストはほとんど変わらない。また、メールの開封率やクリック率などの効果測定も容易なため、投資対効果を明確に把握できる。中小工務店にとって継続的な広告展開は負担となるため、費用対効果に優れたメルマガは魅力的な選択肢となる。
興味・関心や検討段階に応じて読者をセグメント化し、それぞれに適した内容を配信できるのもメルマガの強みだ。例えば、「土地探し中」「間取り検討中」「資金計画中」など、家づくりの各ステージに合わせた情報を届けることで、読者の状況に寄り添った提案が可能になる。こうしたパーソナライズされた情報は、一般的な広告よりも高い効果を発揮する。
メルマガの運用を通じて、開封率やクリック率などのデータが蓄積される。どのような内容に関心が高いのか、どの時間帯に読まれやすいのかなど、マーケティングに活用できる貴重な情報が得られる。このデータをもとに、より効果的な集客施策を練ることができるのだ。
施主との関係は、引き渡し後も継続する。メルマガを通じて季節ごとのメンテナンス情報や住まいのヒントを定期的に届けることで、アフターフォローの一環としても機能するだろう。これにより、リフォームなどのリピート受注や、知人への紹介といった新規顧客の獲得にもつながりやすくなる。
メルマガは継続的に配信することで効果を発揮する。業界の特性や読者のニーズを考慮すると、工務店のメルマガは月2〜4回程度の配信が理想的だろう。あまりに頻繁だと読者の負担となり、逆に間隔が空きすぎると存在を忘れられてしまう。
配信タイミングについては、通勤時間帯・昼休み・就寝前のリラックスタイムなど、日常生活の中で一息つく時間帯は一般的に開封率が高い。しかし、自社の顧客層によって最適なタイミングは異なるため、さまざまな生活シーンに合わせたテストを行い、タイミングを探ることが大切だ。
メルマガの成否を左右する最も重要な要素の一つが「件名」だ。なぜなら、どれだけ内容の充実したメールを作成しても、開封されなければ読まれる機会すら得られないからである。受信トレイに並ぶ多くのメールの中から選ばれる、一目で興味を引く件名を考えよう。
メルマガ件名のポイント
メールが開封されたら次に重要なのは、読者を最後まで読み進めさせる本文の魅力だ。優れた内容でも、文章が冗長であったり、構成が整理されていなかったりすると、途中で読むのをやめられてしまう。特に現代人は多忙で、情報過多の環境にあるため、一つのメールに費やす時間は非常に限られている。読者に価値を感じてもらい、行動を促す文章を作成しよう。
メルマガ本文のポイント
メルマガの最終目的は「読者に行動してもらうこと」だ。いくら開封され、内容を読んでもらえても、次のアクションにつながらなければ意味がない。そこで重要になるのが、明確なCTA(Call To Action)の設置である。CTAとは、読者に「次に何をすべきか」を明確に示す部分で、具体的にはボタンやリンクの形で提示される。
工務店のCTA設置例
住宅購入を検討し始めた段階の顧客に向けて、家づくりの基本的な知識や流れを解説するコンテンツは非常に有効だ。また、住宅購入における最大の関心事の一つが「お金」に関する内容。最新の金利動向や、住宅ローン減税の情報など、資金面での不安を解消するコンテンツは高い開封率が期待できる。
自社の施工事例や、実際に家を建てた顧客の声は、非常に説得力のあるコンテンツとなる。単なる完成写真ではなく、「この家のこだわりポイント」「施主様のライフスタイル」「設計で工夫した点」など、読者が自分ごととして想像できる要素を盛り込むと良いだろう。定期的に施工事例を紹介することで、自社の得意分野や世界観を伝えることができる。
季節の変わり目に合わせて、住まいのメンテナンス情報を届けることも有効だ。例えば春には「カビ・湿気対策」、夏には「暑さ対策・省エネのコツ」、秋には「断熱対策・暖房効率の向上法」、冬には「結露対策・寒さ対策」など、その時々で役立つ情報を提供しよう。こうしたコンテンツは既存顧客だけでなく、これから家を建てる人にとっても有益な情報となる。
工務店の強みを活かした地域密着型の情報も効果的だ。地元の土地情報や、地域のイベント情報、近隣施設の開発計画など、その地域に住む人、住もうとしている人にとって関心の高い情報を発信することで、地域に根ざした工務店としてのブランディングにつながる。
メルマガは即効性のある施策ではなく、長期的な視点を持って継続的に取り組むことではじめて本来の効果を発揮する。ところが、効果的なメルマガ運用を継続するには、コンテンツの企画・作成・配信という一連の作業を定期的に実施する必要があり、これをすべて自社で行うのは現実的に難しい場合も多いだろう。そこで検討したいのが、外部のサービスやコンテンツの活用だ。
外部リソース活用の例
自社運用 | 外部リソース活用 | |
メリット |
・自社の特色を出しやすい ・タイムリーな情報発信ができる ・コストを抑えられる |
・担当者の負担軽減 ・専門知識を活用できる ・安定した配信頻度が維持できる |
デメリット |
・担当者の負担が大きい ・人材不足時に継続できない ・コンテンツ制作スキルが必要 |
・コストがかかる ・自社の特色を出しにくい場合も |
コストを抑えながら継続的な運用を実現するには、双方をうまく組み合わせることが理想的だ。まずは自社でシンプルな情報発信からスタート。家づくりの基礎知識のような定番コンテンツや、専門家監修による信頼性の高いコンテンツなどは、外部リソースを活用するとよいだろう。
LIFE QUARTETでは家づくりの基礎知識やローン情報など、メルマガ掲載用のコンテンツを毎週提供している。プロのコンテンツを活用しながら効率よくメルマガを運用し、長期的な顧客関係構築に役立ててもらいたい。